「アマゾウ」という通販サービスを通して何でも無料で手に入る楽園のような世界。
仕事も学校も試験もない。
人々は毎日、時間もお金も心配せず楽しく過ごしている。
「でも、なんで無料なの??」
ふと疑問を感じた律歌と北寺は、好奇心に任せてこの場所のすべてを探索することに――。
触れてはいけない領域に辿り着いた時、
次第に明らかになっていく謎。
そしてディストピアの中の人間ドラマ。
読む人によって全く異なる感情を抱き、そして読む度に感じ方が変わる。
あなたは何を思う?
何でも好きなだけ無料で注文出来てしまうという「天蔵」。一見すると夢のようなサービスだが、何やら不穏なディストピアの気配が漂っている。「天蔵」とは一体何なのか?
それは現実世界で某密林がしばしば独占や廉売で市場を支配しようとしているのともリンクし、読者の興味をぐいぐいと引っ張っていく。
このディストピアとは何も舞台設定だけの話ではなく、登場人物の内面を反映してもいる。ディストピアから抜け出そうと試行錯誤するうちに、登場人物達は必然的に自己の内面とも向き合い、見つめ直していくことになるのである。
内面を反映した詩情感ある風景描写や心理描写なども作品の雰囲気を上手く伝達しており、途中で描かれるDIYの光景なども良いスパイスでした。